6月29日(木)が2023年のハリラヤ・ハジ( Hari Raya Haji ) でした。マレーシアのイスラム教徒にとってハリラヤ・プアサと並ぶ重大行事。アラビア語ではイード・アル・アドハ (Eid Al Adha )と呼ばれ、犠牲祭と訳されています。
全世界のムスリム(イスラム教徒、女性形はムスリマです)が祝いますが、クアラルンプールでの様子はどうなのか、大多数がムスリムであるマレー系住民が多いカンポンバルに行ってみました。
※ Hari(日)+ Raya(大きな、偉大な)、マレー語は装飾される言葉が前にきます。
スーパーマーケットの看板にはPasar(市場)Raya と書いてありました。
マレーシアではハリラヤ・アイデルアドハとも言います。マレー語アラビア語ミックスですね。1444Hはイスラム暦=ヒジュラ暦1444年の略、宗教行事はイスラム暦で行います。
どんなお祭りなのかな?
5月末、KL市内のアラブ系スーパー衣料品売り場で「これ何?」という品々が売られていました。名付けて「巡礼グッズ」かな。
この商品はイフラーム布です。イフラームとは「メッカ巡礼に適した状態」を意味し、男性は縫い目の無い白布2枚で体をおおう、こととされています。
6/26から始まるハジに向けてのセールですね。
全世界のムスリムの義務であり憧れがハジ(Haji・大巡礼)です。聖地メッカ(より正確にはマッカ)への巡礼ですが、大巡礼と小巡礼(ウムラ・Umra)に分かれます。
どちらもメッカへの巡礼ですが、ウムラはいつでもOkなのに対し、ハジはイスラム暦第12月の8~12日に限定。さらに重要のがウムラは任意ですが、ハジは義務と定められています(可能ならですが)。
ハジ期間の5日間に全世界から200万人の巡礼者がメッカに訪れます。このためイスラム教国・地域に巡礼者枠が割り振られるのですが、2023年のマレーシアの枠が3万人。人口3320万人の75%がムスリムだとして、年にわずか0.12%の人しか行けません。大巡礼経験者はハジ(女性はハジャ・Hajjah)と呼ばれて尊敬されるのも納得いく数字ですね。
ハリラヤ・ハジは大巡礼の期間にあたり、ハジをたたえ信仰を深める意味があります。
この祭りが犠牲祭(マレー語ではハリラヤ・コルバン・Hari Raya Qurban )とも呼ばれるのは別な故事に由来します。
人類の祖アダムとハウワ(イブ)より6代目になるイブラヒム(アブラハム)は息子のイスマイル(イシュマエル)を犠牲(生け贄)として捧げることを神に求められます。
※( )はキリスト教での名称
イブラヒムが我が子を殺そうとした時、神はその信仰の深さをお認めになり、息子の代わりに家畜で犠牲を行うことをお許しになられます。この故事から家畜を屠って犠牲とし、その肉を分ける習慣が生まれました。特に貧しい人への配布が重要とされます。
イスラム教の中の『旧約聖書』
キリスト教に詳しい方は、アダムやアブラハムという名前がイスラム教に登場するのに ??? と思われたかもしれません。この故事はユダヤ教・キリスト教の聖典『旧約聖書』に登場しますので。聖書を映像化した映画『天地創造』でも重要なシーンでした。
実はユダヤ教・キリスト教とイスラム教は密接な関係があります。イスラム教では『旧約聖書』は真の神の出現を預言する聖典のひとつとして扱われ、イエス・キリストも預言者の1人とされます。
イスラム教が拡大した時もユダヤ教徒・キリスト教徒は『聖典の民』と呼ばれ、税負担をすれば信仰の自由が認められる特別待遇を与えられていました。まあ、その後十字軍、植民地化、パレスチナ問題等で対立していきますが。
祭りの朝、近所の様子
トラタロウの家の近所には、マレー系民族衣装をあつかう一大服飾店街がありまして、休日は大勢のマレー系住民でにぎわいます。
でもハリラヤ・ハジの朝は10時すぎてもガラガラ。服飾以外のマレー系の店もほとんどクローズでした。
モスクに正装で行く人は多かったです。
ハリラヤ・プアサ同様、帰省のシーズンです。期間中のバスチケットは売り切れのニュースが流れました。
カンポンバルに行ってみた
カンポンバル(Kampung Bharu)は大都会の真ん中にありながら、一戸建てがほとんどのマレー系住民居住区。入ってすぐの飲食店街は観光地でもあります。
普段は朝のウォーキングコースのひとつですが、今日はすみずみまで周るため自転車で行きます。
観光客相手の飲食店街が並ぶメインストリートの店はほぼ閉店。地元民相手のローカルな店は開いていました。
居住区を周るとバジュラヤ(正装)の住民が目立ちます。バイクで暴走しているお兄ちゃん達もバジュラヤだと微笑ましいですね。
コルバン(犠牲)①ソフト…解体もほぼ終わってました
本日世界中のイスラム地域で牛・水牛・羊・ヤギなどが屠られ解体されているはず。でもブキビンタンやKLCCでそれが行われるのはありえませんよね。カンポンバルならありそうなので来ましたが、時間が遅かったので屠殺は終了、解体中でした。
進行状況で日本人が見てもショックを受けない程度をソフト、これは人によっては見れないな、というレベルをハードと分類しました。苦手な人はハードは見ない方がよいかと。
政治家の写真と今日の2:00というバナー。全部マレー語なので詳細不明だが何かがあるのはたしかなので、また来てみよう。
コルバン(犠牲)②ソフトかな?…正肉・部分肉状態です
居住区中心部のコミュニティで大勢の住民が作業中。部分肉(足・胴などに分けられた状態、マレーシアのスーパーなら見かけます)から正肉を切り取っている最中。
ちなみに牛を5頭屠ったそうです。なかなかの金額になるな。
トラタロウはいろいろな国の市場や神殿(生け贄を捧げる宗教もあります)で屠畜やら解体を見ているので耐性はあります。
でも今回電動ノコで牛骨のカットをみていたら、歯医者で歯を削る時と同じ匂いがして閉口しました。
コルバン(犠牲)➂ハード…皮をはいだ枝肉、頭もあります
②の作業の横ではまだ解体作業進行中。皮を剥がれた枝肉をさらに解体しています。
このへんは血もでてグロいので耐性低い方は見ない方がいいですね。
※ ここで取材をする日本人YouTuber の方と会いました。
動画がアップされたらまた紹介したいと思います。
コルバン(犠牲)④ソフト…終わって調理を始めます
一番奥の方のコミュニティは作業ほぼ終わり。自分たちが食べるための肉の切り出しと調理が始まっていました。今日はみんなでごちそうですね。
はて、肉はどこで配られるのかな?
カンポンバル・モスクでコルバン配布です
カンポンバル・モスクに行ってみたら長蛇の列。コルバンの肉はここで配布されるようです。
KERBAU(水牛)、LEMBU(牛)、KAMBING(羊)、EKOR(一頭)、BAHAGIAN(部位)、IBADAH(お勤め)と単語をひろってみました。どうもザカート(喜捨、ムスリムの義務です)としてコルバンを出す場合の価格表みたい。
水牛・牛は一頭約18万円、羊は3万6千円、屠殺・解体・袋詰め料コミでしょうが、けっこうしますね。
日本のムスリムは大変
ムスリムにとって豚肉はハラーム(飲食不可)なのは当然ですが、他の家畜も戒律に従う正式な手順で屠殺・解体しないとハラール(飲食可)と認められません。
つまり日本のスーパーに売っている牛肉などは厳密にはダメです。近年はハラール・ミートも売られていますが、日本のムスリムは肉の入手が大変です。
あの方がやって来ました
2時前にバナーのあった場所に行くと地元民が集まっていました。なにが始まるのか聞くと「ボスが来るぜ」とのことです。
やって来たのはティティワンサ選出の大臣経験もある国会議員 Johari Abdul Ghani (ジョハリ・アブドゥル・ガニ)氏でした。トラタロウはこの方知っていました。5月初めにカンポンバルで政治家主催のオープンハウスがありましたが、その主催者です。
顔と名前が一致するマレーシアの政治家はこの方とマハティール元首相だけですね。
※ カンポン・バルで政治家のオープンハウスに行ってみた に移動します
この後地元民は会食を始めますが、トラタロウも待っている間に仲良くなった地元青年(ソニー勤めているとか)に招かれ、テーブルにご一緒しました。
この時ごちそうになったビーフ・レンダンが絶品。「美味いですね」と言うと「新鮮だからね」と言う返事。ああ、数時間前で生きていた牛だもんね。少々複雑な気持ちになりました。
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