久々の投稿です。3月初旬から3週間ほどベトナムに行っておりまして、ホーチミンの南に広がるメコン・デルタ地帯をのんびり周っていました。4回目のベトナムですが、マレーシア在住という立場で見るといろいろと違う物が見えてきます。同じ東南アジアの国でもだいぶ違いますね。両国の違う所を比べてみました。
両国の基本データを挙げてみます
マレーシア(馬)・ベトナム(越)両国は南シナ海を挟む隣国で、国土面積はどちらも日本の8割ちょっとぐらい。
人口は3236万人:10380万人で越が3倍近く多いです。
でもGDP(PPP)/1人あたりは27435$:10559$と馬がかなり優勢。※日本は52120$
しかし若年労働人口の多さと「チャイナ・プラス・ワン」で伸びしろは越がかなり期待できます。
ホーチミンならKLからわずか2時間のフライトで到着。コタキナバルより近いな。
比較① 3大民族とキン族一強
マレーシアはマレー系(65%)華人系(24%)インド系(7%)の3大民族がいますが、ベトナムはキン(京)族が86%と一強状態。
キン族は中国人や東アジア人にも少し似ていますが、微妙に違う人たち。東アジア人と東南アジア人の中間の感じ。実際位置的にも中間地帯ですので。
沿岸部はキン族がほとんどですが、マレーシアから伝わったイスラム教を信じるチャウ族やクメール族(カンボジアの主要民族)など少数民族もいました。
比較② マレー語とベトナム語
マレーシアでは華人系(広東語中心)、インド系(タミル語中心)など民族により言語が異なりますが、公用語はマレー語。
文字はアルファベット表記、文法的にもそんなに難しくなく、カタカナ発音でもけっこう通じてしまうので日本人が学習するのにも支障はありません。
ただマレーシアあるあるですが、日本人にはマレー語習得が必須ではありません。なぜならイギリスの支配下にあった関係もあって、英語の通用範囲が広いので。少なくともKL市内ならどの民族のマレーシア人と英語で意思疎通がはかれます。
トラタロウもマレー語を学ぼうと教本など持ってきましたが、ご挨拶レベルで止まっています(笑)。日々衰えていく英語力を維持するのが精一杯。
逆にベトナム在住者はベトナム語習得必須でしょう。大都市でも田舎でも英語はまず通じませんので。
マレー語と同じくベトナム語もアルファベット表記ですが、見慣れない記号がついているのに気づきます。これは声調・母音記号で同じ単語でも発音・意味が全然変わるようです。
基本的なベトナム語表現をカタカナで書いて使ってみましたが、発音が難しすぎて全然通じません。「シンチャン」(こんにちは)や「カムオン」(ありがとう)ぐらいは解ってくれますが、地名や食品名すら通じないこともありました。
中国語も発音が難しいため漢字で書いて見せるのが確実でしたが、ベトナムでも同様。アルファベット表記でよかった。まあ、最近はスマホ翻訳でOKですけど。
比較➂ 紅茶とコーヒー
旧大英帝国植民地だった国々は紅茶が飲み物の主流になる国が多いです。マレーシアも半島中部キャメロンハイランドに茶園が開発され、紅茶がよく飲まれる国。
高所から茶をそそぎ空気をふくませたテタレやアイスティーであるテアイスが人気。コーヒーもありKOPIと呼ばれます。
チュニジアなど旧フランス植民地だった国はコーヒーが飲まれていました。ベトナムもフランス風の深煎りコーヒーが普及しており、独特の抽出器具でいれます。暑い時期はコンデンスミルクを入れるアイスコーヒーであるカフェ・スア・ダが人気。
あまり知られていませんが、ベトナムは世界のコーヒー生産の2割近くを担い、ブラジルに続く生産量2位のコーヒー大国です。
比較④ 車の通行方向
マレーシアは住みやすい国ですが自動車・バイクの運転マナー、特に歩行者保護が最低クラスなのが難。いくらか救いになるのは日本と同じ自動車左側通行なことですが、イギリス方式だからです。
ベトナムはフランス(大陸)方式なので自動車右側通行。問題はアメリカと同じく赤信号でも右折は可能というルールがあるため、横断歩道を通行中も車両が突っ込んでくるので危険。
歩行者にとって両国共に交通事故危険度はトップクラスだと思います。ホーチミン滞在中1日に2~3回救急車の緊急走行を見ました。
比較⑤ 自動車とバイクの数
ここ10年くらいでKL市内のバイクの数増えていませんか? 特に朝晩のラッシュ時はバイクが目立つような。
調べてみると人口100人あたりのバイクの台数が日本は9.5というデータがありましたが、マレーシアは34.7でベトナムの29.5を超えていたのが意外でした。
ただマレーシアはバイクも多いが自動車も多いです。ベトナムは自動車が少なくてバイクが多いので見た目はバイク王国ですね。ちなみにトップは65.3の台湾でした。
社会実情データ図録 のデータを使いました
比較⑥ 市内鉄道網
トラタロウが初めてKLを訪れた1993年当時は鉄道といえばマレー鉄道しかありませんでした。それから30年、KL市内では十数本の市内鉄道路線が運営されとても便利です。
どこの国でも大都市にはバスがありますが旅行者や外国人が使いこなすのは困難。市内鉄道網が発達したKLは市内交通では東南アジアNO1と言えます。
ベトナム大都市の市内交通事情はKLの足元にも及びません。ハノイでやっと地下鉄が開通し、ホーチミンもほどなく開通するようですが質・量ともに比較にもなりません。
その代わりKLには無いバイク・タクシーのスリルを楽しめます。
比較⑦ イスラム教と仏教
マレーシアでは華人系(仏教・道教)インド系(ヒンドゥー教・キリスト教)と民族ごとに宗教が異なりますが、最大は65%を占めるイスラム教。
マレーシアの国旗に描かれる三日月と星はイスラム教のシンボルであり、朝夕に祈りを呼びかけるアザーンが流れます。
ベトナムは仏教国ですが、他の東南アジア仏教国(タイ、ラオス、ミャンマー)が個人の修行を重視する上座部仏教なのに対し、仏様にすがり皆を幸せに導く大乗仏教が主流。
中国の影響を受けてか道教、儒教の要素も混じっている雰囲気でした。
フランスの植民地だった影響でキリスト教(カトリック)も盛んです。どの町にも教会があります。
比較⑧ 市場で働く男女
イスラム教社会の考え方の一つに「女性はあまり外に出ず、家庭を守るのが良い」というものがあります。トラタロウが訪れたイスラム教国でUAE(アラブ首長国連邦)、シリア、イラン、パキスタンなどは、市場の売り手も買い手も男性のみでした。
マレーシアはイスラム教国の中では柔軟な方ですが、市場では男性の方が多いです。
ベトナムでは市場は女性の天下。ベトナム女性は「芯が強くて働き者」と言われ、「ちょっとノンビリしている男性」に代わって一家の大黒柱として稼ぐ人が多いとか。
市場の店や食物屋台を切り回すのは女性が圧倒的に多いのです。
比較⑨ 猫天国と犬天国
イスラム教は犬を不浄と考えるため、犬を飼っているのは華人系インド系がほとんど。
代わりにイスラム教徒がかわいがるのが猫です。マレー系住民の住む場所ではいたる所に猫がいる猫天国。野良猫にも誰かがエサを与えているようです。
ベトナムはお犬様天国。これまたいたる所に犬の姿がありますが問題もあります。
・首輪をつける習慣がほとんどなく、飼い犬か野犬か識別困難。
・雑種が多く犬種での野犬識別困難。
・居住区だと番犬なので吠えられる。
・狂犬病もあります。年に50人くらい死亡しているとか。
比較⑩ チキンとポーク
イスラム教徒は豚肉禁止、ヒンドゥー教徒もほぼ食べません。豚肉は華人しか食べず、隔離されている感じ。
よってマレーシアでは肉の中心がチキン。マレー料理の主役はチキンでアヤムバワン(玉ねぎチキン)など美味しいチキン料理が多いのです。
インド系チキン料理の代表タンドーリチキンもオススメ。
ベトナムは宗教的なタブーが無いし、中国の影響が強かったので豚が主力。市場の肉屋もポーク売り場が一番広いのです。
代表的な豚肉料理がコムスンという焼き豚定食。特製タレに漬け込んだポークを炭火で焼いてご飯と共にいただきます。肉に下味はついていますが、付属のニュクマム(魚醤)タレと合わせるとさらに美味。
比較⑪ 紙ナプキンの有無
マレーシアでは高級店はいざしらず、普通の店では紙ナプキンを置いている所はほぼありません。その代わり手を洗う場所は必ずあります。
最近でこそスプーン・フォークを使う人が多いですが、マレーシアは手食(手を使って食べる)文化圏だったからでしょう。インド人はマレー人より手食を行います。
ベトナムでは路上の屋台でさえ紙ナプキン常備。これは埃っぽい路上のテーブルに置かれた箸やスプーンを紙ナプキンでふいてから使う習慣があるからです。
比較⑫ 小麦麺と米麺
マレーシアでも米製の麺はありますが、麺の主力は小麦麺。華人系の店で出されるドライミーやカリーミーなどは小麦麺。マレー系の店で出されるラクサも小麦麺です。
ちなみにマレーシアの穀物自給率は20%程度で超低い。これは植民地時代に油やしなどの商品作物を強制栽培させられた影響です。
ベトナムにも小麦麺はありますが、主力はフォーやブンなどの米麵。ちなみにベトナムの穀物自給率は117%。KL市内のスーパーで売られる小麦粉の多くはベトナム産です。
ベトナムのフォーについてはこちらもご覧ください。
世界のB級グルメ/02 フォー in ベトナム
比較⑬ 料理
トラタロウが移住先にマレーシアを選んだ理由のひとつが外食の選択肢が多いこと。
マレー系、華人系、インド系の三大民族がいるので当然それらの民族料理店が多くて、美味しくて、さらに安い。
また華人系のカリーミーやインド系のロティチャナイなど、マレーシアで独自に発展した本国にも無い料理があります。
とにかくマレーシアは知られざるB級グルメ大国。ちなみに日本のファストフードチェーン松屋が、マレーシア美味しい物のひとつビーフルンダンを発売するらしい。次の一時帰国で食べてみよう。
現地料理がダメでも大丈夫。高級日本食はもちろん築地銀だこ、すき屋、一風堂、しゃぶ葉、ペッパーランチなど日系ファストフード店もあります(KLなら)。
ベトナムは大都市以外はベトナム料理しかありません。フランスパンのサンドイッチであるバインミーは、パンは外国起源ですが、中身は完全にベトナム化していますね。
ただベトナム料理は日本人にすごく向いています。理由は次の通り。
① ベトナムの基本調味料であるニュクマム(魚醤油)は日本人が好むグルタミン酸ナトリウムが豊富。
グルタミン酸と言えば「味の素」ですが、ベトナムでは人気抜群。両国の味の基本は同じなのです。
② ニュクマムをベースに甘味を加えた「甘辛い」味付けが多く「ご飯のお供」になるおかずが多い。ただ昔の日本もそうでしたが、少しのおかずで大量のご飯を食べる習慣なので味付けは濃いめ。小皿のおかずでご飯3杯はいけます。
➂ フォーをはじめとした麺料理が多彩。米麺ではあるが麺好き日本人にも向きます。
オススメは焼肉ソウメン的なブンチャー。ハノイの名物ですが、ホーチミンにも店がありました。
④ タイやマレー料理と違って基本辛くない。辛いのが好きな場合はトウガラシや辛味ニュクマムを追加。
比較⑭ 肥満率
クアラルンプールに住んでいるとマレーシア人(特にマレー系)で体重過剰な人が多いことに気づきます。肥満率は15.6%もあり、成人の5人に1人が糖尿病かその予備軍だとか。
まあ、ご飯の盛りが多いし、油使った料理多いし、テアイスなどの甘い飲料やデザート好きだし、と原因は明白です。
ベトナムは肥満率2.1%で目立つほどの肥満者は見かけません。ベトナムにくるとご飯や麺の盛りがマレーシアの7~8割ぐらいで、少しさみしく感じますがこれぐらいがいいんだよね。
またベトナムに行きたいが
マレーシアとベトナム、同じ熱帯、ASEANの国なので共通点も多いです。
両国民とも少し内気だけどフレンドリーで親しみやすいのが一番良い共通点ですね。
一番悪い共通点は交通事情とドライバー、ライダーのマナー。完全に自動車・バイク優先社会で危険がいっぱい。こればかりはシンガポールを見習ってほしい。
コメント
コメント一覧 (2件)
ベトナム戦争は結構長い期間続きその間、新聞、ラジオなどで戦況の変化とか住民の苦悩とか報告されていました。長い経過の上で戦争終結の報告があったときは本当に皆で喜び合ったことを思い出します。ですがその時、また今まではベトナムがどこにあって、どのような住民がベトナムはどんな文化があったのかよく知らないでいました。
今、トラタロウさんのこの投稿を見て、ベトナムはマレーシアとこんなに近かったんだとか、住民はそれなりの立派な文化を持ちかつ、現世を楽しんでおられることが解り改めて遅らせながらベトナム戦争が終結した事の喜びが再び私の中に芽生えてきました。
パパタロウ様
読んでいただきありがとうございます。
ベトナム戦争はずいぶん昔に感じられますが、ベトナムのあちらこちらに戦争博物館があり、その惨禍を忘れないようにしていると思いました。同じ東南アジアでも南北で違うと思いますが、北は仏教、南はイスラム教という違いが大きいとおもいます。幸い両宗教とも平和を重んじ、仲がそんなに悪くないのが救いですね。
トラタロウ