イスラム暦(ヒジュラ暦)12月8日よりメッカへの大巡礼が始まりました(西暦だと6/14から)。巡礼者はハジ(Haji)と呼ばれ特別の尊敬をあつめます。巡礼の終わりの日はイール・アル・アドハ(Eid AL Adha)というお祭りで、マレーシアではハリラヤ・ハジ(Hari Raya Haji)と呼ばれます。
この日は各コミュニティで家畜を屠って肉を貧しい者にほどこす日。クアラルンプールの中心部にあるカンポンバルにその様子を見に行きました。
※ 第3章から屠畜・解体の画像が入ります。思っていたほどスプラッターな光景ではありませんでしたが、苦手な方は見ないほうがよいです。
ハリラヤ・ハジはどんな祭り
5月に入るとマレー系の服屋では白い独特の衣装が売り出されます。これはメッカ巡礼に行く時の衣装ですね。看板には巡礼地カーバ神殿の写真です。
サウジアラビアにある聖地メッカ(マッカ)は預言者ムハンマドに神の啓示が与えられた場所。イスラム教の聖地としてムスリムは巡礼に行くべきとされます。
いつ行ってもよさそうですが、イスラム暦12月の巡礼は大巡礼(ハッジ)といい、他の時期の小巡礼(ウムラ)とは別格のあつかいなのです。
この大巡礼に参加した者はハッジ(女性はハジャ・Hajjah)と呼ばれ尊敬されます。
大巡礼は各国に参加割り当てがありマレーシアのそれは約3万人。マレーシア人口3431万人の65%がムスリムとすると2230万人。この中の3万人しか参加できないのでハッジになるのは大変ですね。
イール・アル・アドハ(ハリラヤ・ハジ)は大巡礼時期の最後に巡礼の成功をたたえ、信仰を深めるために行われる祭り。ちなみに今年の大巡礼は50度を超える猛暑の中で行われ、1100人以上の死者が出たそうです。巡礼中に死亡すると「天国」行き確実とみなされますが、それで済む問題ではないですね。
マレー系の居住区がカンポンバル
高層ビルが立ち並ぶKL中心部ですが、カンポンバルは平屋家屋がほとんどで緑にあふれるオアシスのような場所。ここはマレー系住民が多く、環境保護のため売買・開発が制限されています。そのため大都会なのにカンポン(村)の雰囲気が残り、昔からの習わしや行事が伝わる場所。
イール・アル・アドハ(ハリラヤ・ハジ)は犠牲祭とも訳され、家畜を屠って肉を分ける祭り。現在は業者に屠畜をまかせることが多いようですが、ここカンポンバルでは地域住民が自ら行う所もあるのです。
昨年犠牲祭を行っていたコミュニティに行くと牛・山羊はつながれていましたが、人影が少ない。準備をしていた女性に聞くとお祈りが終わってからとのこと。
カンポンバルあるあるですが、お祭りの時に行くと目を疑う光景を見ます。小学生くらいの子供がバイクを乗り回しています。しかもノーヘル、2~3人乗りで。
普段は見ない光景ですが、お祭りの時は家長たるお父さんの許可が出るのかな?
今回も爆走バイク小学生を見ました。ちなみにカンポンバルで警察官を見たことがありません。治安は良いのでしょう。
カンポンバルとその周辺でこんな年中行事があります。
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2023ラマダン・バザールに行ってみた①カンポン・バル編
コルバン(犠牲祭)が始まります
イール・アル・アドハ(ハリラヤ・ハジ)が犠牲祭とも呼ばれるのは牛・山羊などの家畜を犠牲(神への捧げもの、アラビア語でコルバン・Qurban)とするからです。
これはイブラヒーム(アブラハム)が神への信仰を示すために我が子イスマーイール(イシュマエル)を犠牲にしょうとした古事から来ています。ユダヤ教・キリスト教の聖典『旧約聖書』に載る古事ですが、実はイスラム教も『旧約聖書』を聖典のひとつとして認めているのです。※( )内はユダヤ教・キリスト教での名称。
現在パレスチナ問題などでユダヤ教徒とイスラム教徒は対立していますが、本来は兄弟民族。昔のイスラム社会ではユダヤ教徒は「聖典の民」として優遇されていました。
今回おじゃましたのはカンポンバルの中心部にある小学校の東側にあるコミュニティ集会所。昨年も行ったのですが、時間が遅くて屠畜は終了していました。
ただこの地区を地盤とする政治家Johari Abdul Ghani (ジョハリ・アブドゥル・ガニ)氏が訪問されるということで午後におじゃましたことがあります。その様子はこちらをご覧ください。
2023ハリラヤ・ハジ(犠牲祭)を感じてみた
集会所には3頭の牛と10匹ほどの山羊がつながれていました。犠牲祭始まりを待っていると地元民が中に入って見るように招いてくれます。
※ ここから屠畜・解体の画像が入ります。思っていたほどスプラッターな光景ではありませんでしたが、苦手な方は見ないほうがよいです。
動きを封じられた牛は排水溝に引きずられていきました。血を処分するためです。
欧州・中国などは家畜の血も食材としますが、ユダヤ教・イスラム教の掟では血を食べることは禁じられています。
イスラム教徒が食べてよい肉はアッラーへの祈りと共にナイフで首を切って屠畜された肉だけ。係が首を切る時、周りの男たちが口々に「アッラーフ・アクバル」(アッラーは偉大なり)と祈りの言葉を唱えました。
日本で屠畜された牛などはイスラム教の規定を満たしていないため、厳密に掟を守るムスリムにはハラーム(食用不可)。ハラール(食用可)の印がついた冷凍物が売られています。
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袋づめにされた肉は貧しい人々に配られます。イスラム教は信者同士の助け合いを重要視。貧しい者に対する施しはザカート(喜捨)(Zakat)と呼ばれムスリムが行うべきことのひとつです。
カンポンバルは田舎の雰囲気はありますが、住民は都市生活者。普段屠畜なんてしないはずですが皆慣れていますね。子供の頃から見ていて大きくなると参加するので会得していくのでしょう。
犠牲の肉が配られる場所のひとつカンポンバル・モスクに行ってみました。
モスクの中では牛の解体をやっていました。肉の配布はまだ先のようです。トップ画像のコルバン募集バナーはここの物ですが、ずいぶん高いので解体料こみなのでしょう。
だんだん空模様が怪しくなってきました。最近スコールが多いので今日はこれで撤収しましす(帰ったら大雨になりました)。昨年の犠牲肉配布画像をつけておきます。
昨年は何ヶ所ものコミュニティ集会場で犠牲祭をしていましたが、今年は少なくなっている感じ。ここも自分たちで行う習慣が薄れてきているのかな。
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