旧暦7/15は冥界の門が開きご先祖様の霊が家に戻ります。子孫を守ってくれる祖霊を歓待し、冥界に戻る時はお土産を渡すのが中元節。この時期には悪霊も解き放たれるため、これらの霊を慰めるお祭りでもあります。このため英語ではGhost Festival と呼ばれる中国の年中行事。
中国系(華人)が多いクアラルンプールでは、鬼節と呼ばれる旧暦7月に各地の華人コミュニティで中元節が開かれます。昨年はチョーキットの華人街に行ってみましたが、今年はアンパンに行ってみました。こちらは福建系のコミュニティで昨年とは少し違う中元節です。
中元節とはどんなお祭りかな?
中元節は3つの宗教・思想がミックスされて完成しました。
①道教の「三元」の祝い ②仏教の盂蘭盆会・施餓鬼 ➂儒教の孝養 です。
①道教の「三元」の祝い
中国の民族宗教である道教では、旧暦の1/15、7/15、10/15を年の節目の「三元」として祝う風習がありました。
特に年の真ん中である7/15は「中元」として重要視されます。日本ではご贈答シーズンを意味する「お中元」もここから来ています。
西暦2024年は 8/18 が旧暦 7/15 となります。
②仏教の盂蘭盆会・施餓鬼
日本で「お盆」と呼ばれるのが盂蘭盆会(うらぼんえ)です。これは冥界から戻ってきた先祖の霊を迎え、慰める行事。同時に餓鬼地獄に堕ちた霊である餓鬼も供養します(施餓鬼・せがき)。
中国では盂蘭勝會と呼ばれ、祖霊を祀ると共に子孫により祀られない孤魂野鬼を慰め、取りつかれないように注意をするとか。
※ 中国語では「鬼」は「幽霊」を意味。ゴーストタウンは鬼城です。
※ 中元節期間の注意事項はこちらのサイトに詳しいです
意外と知らない中国の風習|中元節の禁忌事項
➂儒教の孝養
儒教は中国の倫理・生活規範をまとめた教えです。特に重要なのが孝養で父母・祖先を大事にし、その霊を祀ります。特に大事なのが供物。死者の住む冥府では生活用品は子孫が用意しなければなりません(なかなか世知辛いですね)。紙で作ったお金・衣類・靴・食品・自動車・住宅・召使いなどをお供えます。
これらが混合して中元節となりました。中国本土は文化大革命などで伝統行事がかなり失われており、東南アジアの華人社会の方が昔からのしきたりを守っている感じですね。
※ 2023年はチョーキット近くの華人街の寺院宗聖堂の中元節を見てきました。
2023中元節を見にローカル華人街に行ってみた に移動します
※ 中元節についてはこちらのブログに詳しいです
壺中天 死者の夏祭り:中元節の世界 に移動します
中元節のお祭りはいつやるの?
中元節は旧暦7/15とされますが、この日にお祭りをするとは限らないようです。2024年は8/4からが鬼節と呼ばれる旧暦7月の始まりで、約1ヶ月続きます。
パサースニ駅横のチャイナタウンでは8/4~8/6、昨年行ったチョーキット近くの華人街では8/12~8/15に行ったようです。まあ旧暦7月の中ならどこでもいいのかな?
今年は別な寺院に行ってみたいと思い候補に挙げていたのが、LRTアンパン駅から近い九皇爺南天宮という所。英名 Nine Emperors Gods Temple です。
中元節のスケジュールが分からなかったので旧暦7/15である8/19に行けば何かやっているかな、と行ってみましたがハズレ。この時はどこも旧暦7/15にやると思い込んでいたのです。
ちなみにアンパン地区はクアラルンプールの東側ですが、KL市ではなくセランゴール州になります。
盂蘭勝會開催の看板があったので、わざわざ行っただけの成果はありました。大士爺は戻ってくる霊をつかさどる神様。歌臺(台)は霊を喜ばすShowを見せる舞台です。農歴7/18~7/19にお祭りがあるのでしょう。
問題は農歴って何だ? 西暦にするといつなんだ? そこはインターネットのありがたさ、検索すると出てきました。農歴は中国の旧暦であり、農歴7/18~7/19は西暦8/21~8/22になるようです。
ちなみに西暦は太陽の運行を基準とし、旧暦は月の運行を基準とします。旧暦の方が農業運営と合性が良いらしく、昔はアジアの多くの国は日本を含めて旧暦でした。今も宗教行事などは旧暦でやる事が多いのです。日本は新暦に合わせてしまいましたが。
8/22(旧暦7/19)に再度行ったら歌謡ショウ
3日後に再度行きました。夜7:00開演のようなので6時過ぎにアンパンに行くバスに乗ったらスコールで大渋滞! 通常30分以内で着くのに2時間かかった。あんまり夜にバスで出かけたことが無かったのでスコール時の渋滞なめていました。
中元節のテーマは祖霊を喜ばすこと。昨年おじゃましたチョーキット近くの宗聖堂では仮設舞台で古典劇が上演されていました。これは神功戯と呼ばれるもので、観客は人間ではなく祖霊のみなさんです。
アンパンでは人間も楽しめるShowを上演。ちょっと情緒に欠けますが、霊はにぎやかなことが大好きとかでOkでしょう。
にぎやかと言えばこれ以上にぎやかな物は無い中国芸能がライオンダンス。地元青年・少年少女のチームが技を披露します。
※ 動画は環境によっては読み込みに時間がかかります
中国旧正月の春節では、各地でライオンダンスが披露されます。特に見ごたえがあるのは高いポールの上で技を披露するアクロバティック・ライオンダンス。
春節の華 ライオンダンスを見に行ってみた に移動します
境内は供物にあふれます
KL市内あるに道教儀式用具店に行くとあるのが紙扎。これは紙で作った衣類・靴・住宅・自動車・食品・貴金属などの模型です。これを焼くと冥府の祖霊に届くという仕送りみたいな物。宗聖堂はこれが多かったが、九皇爺南天宮は少なく、代わりに実物食品のお供えが目立ちました。
道士によるお祈りです
九皇爺南天宮はなかなか立派な道教寺院で、毎年10月には盛大な祭礼が行われるとか。本堂で礼拝をする人も絶えません。
中元節の習慣として巨大な大士爺(面燃大士)の像が飾られます。これは仏教に由来する神様で、鬼節に解放された霊の監視・指導を行うとか。就学旅行の引率教員みたいなもの? 祭りの終わりに燃やされて冥府に戻ります。宗聖堂にはありませんでしたが。
道士(道教の僧侶)の先導で線香を持った地元民がお祈りをします。近年身内を亡くした方々なのかな。本堂~大士爺~臨時祭壇を周ります。
※ 動画は環境によっては読み込みに時間がかかります
同じ中元節でも昨年訪れたチョーキット近くの宗聖堂とアンパンの九皇爺南天宮ではいろいろと違いがありました。専門的なことは分かりませんが、供物の種類、大士爺像の有無、道士の服装などから見てとれる物があります。
同じ華人でも地域・文化・言語などが違うはず。マレーシアの華人も言語だけで広東語・福建語・北京語などのグループに分かれます。アンパンの華人は福建語文化圏です。
あいにくの雨天ですが中元節のフィナーレは供物を燃やし冥府に届ける儀式。宗聖堂はKL市内では燃やすのが禁止なのかありませんでした。九皇爺南天宮はスランゴール州であり、広い境内でできるので盛大に燃やすみたい。
最後まで見たいところですが、帰りのバスの都合もあるので10:30で撤収。ちなみに行きは大渋滞で2時間かかりましたが帰りは20分でした。
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