前回お伝えしましたが、2/9の夜に御神体がスリ・マハ・マリアマン寺院よりバトゥ・ケーブに移動。翌々日の2/11に大祭であるタイプーサムが行われました。
今まではマレーシア国鉄KTMで見に行っていましたが、最近バスを利用することを覚えたのでこれで行ってみました。するとこの日は無料シャトルバスが運行されているではありませんか。
今年のタイプーサムの様子をレポートします。
タイプーサム(Thaipusam)はどんな祭りかな?
インド人の多くが信仰するヒンドゥー教ですが、ここマレーシアも人口の約7%がインド系(南インドのタミル系が多い)であるため信者が多いのです。
特に南インドで人気があるのがムルガン神(スカンダ神)で、クアラルンプールのヒンドゥー教聖地バトゥ・ケーブもこの神を祀る場所です。ここには高さ43mの巨大な黄金のムルガン神像が建てられており、KLを紹介する場面では必ず登場する場所。
この神像の左手の272段の階段を上るとムルガン神を祀るスリ・スブラマニアム神殿があり、タイプーサムでは大勢の信者がここにお参りします。次の画像でわかりますが、大きな階段が信者で埋め尽くされていますね。

※ 仏教・ヒンドゥー教は関連が深い宗教です。ヒンドゥー教の神々の多くが仏教守護神(天部)として取り込まれ、ムルガン神は仏教では韋駄天です。徳川家康も信仰したという歓喜天(聖天様)は兄神ガネーシャの仏教での姿。

ヒンドゥー教は多神教で多くの神々がおられますが、人気の高いのが創造と破壊の神シヴァ。前の画像ではシヴァの隣に妃パールバティ神、その膝に長男のガネーシャ神(象の顔)がいます。そして左手にいるのがムルガン神。
ムルガン神はシヴァ・ファミリーの次男になります。優し気な少年の姿で描かれることが多いのですが、有数の武威を誇る軍神なのです。
かつて神々と悪神(アスラ)が争い、神々が劣勢となります。この時ムルガン神は母より与えられた槍を駆使して悪を打ち滅ぼします。タイプーサムはこの悪に対する善の勝利を祝うために始まりました。このためムルガン神は必ず槍を持った姿で描かれるのです。
タイ(Thai)はヒンドゥー教暦の1~2月、プーサム(pusam)は星の名前で、タイの月の満月に祭りは行われます。この暦は月の運行を基準に作られかつ微調整しますが、西暦にすると祭りの日は毎年ずれます。ちなみに昨年のタイプーサムは1月の25日でした。
※ 昨年のタイプーサムの様子はこちらをご覧ください
2024 タイプーサムに行ってみた … 苦行がソフト化していました に移動します
バトゥ・ケーブへの行き方は

必ずバトゥ・ケーブ行きに乗りましょう。
クアラルンプール中心部からバトゥ・ケーブに行くのに便利なのはマレーシア国鉄KTMです。KLセントラル駅から40分ほどで、特にタイプーサム期間は増便・24時間運行。ただ大変混むので今回はバスで行ってみました。
バスだと173番なのですが、当日ドライバーに聞いてみるとタイプーサムで混雑するのでバトゥ・ケーブのバス停には停まらないとのこと。
これは電車しか無いのかな。と思っていたらバトゥ・ケーブ直通・無料バスが来ました!

バスターミナルがあるパサースニ駅を出たシャトルバスは、ほとんど停まらないので40分もかからずに着いてしまいます。時間的にはKTMと同じくらいですが、あまり混んでいないので何とか座れて楽。路線バス173番が停まるバス停NISSAN前が終点で、帰りのバスもここから乗れます。


※ 無料バスで助かった、と思ったら今年はKTMも無料だったようです。
タイプーサム見所① 境内を埋め尽くす参拝人
2025年のタイプーサム参加者は 2/1~2/11 正午までで延べ180万人と発表されました。昨年の20%増しだそうです。観光客も多いですが、ほとんどはヒンドゥー教徒のインド人で、マレーシアのみならずインドや周辺諸国からも訪れているようです。
この宗教的な熱気はちょっと簡単にはお目にかかれません。異教徒はお邪魔にならぬよう気をつけて拝見します。





黄色は「純潔」「清廉」のシンボルとされます。ヒンドゥー教では牛は聖獣として大事にされ、牛肉は絶対食べません。ミルク・乳製品は大変良い物とされ、インドのミルク生産量は世界一。





階段を登ると洞窟の入り口。洞窟左手に寺院があり参拝人はそこでミルクを捧げます。タイプーサム当日はとんでもない混みようですが、他の日は問題なく行けます。


タイプーサム見所② カバディ(神輿)の意匠
カバディ(Kavadi)はムルガン神をたたえる意匠が施された一種の神輿(みこし)です。熱心な信者(かつ体力がある)は20~30キロにもなるこれを担いで参拝をします。
カバディにも様々な意匠があるので、これを見比べるのも一興でしょう。
意匠の特徴としては次のような物が目立ちます。
① 階段状の立体的な物と円盤状の物が多い。
② ムルガン神の像や絵をあしらう。時々他の人気神様も登場。
➂ 孔雀の羽根で装飾。孔雀はムルガン神の乗り物でこれを従えます。



神殿型は発泡スチロールなどで作られていましたが、それでも相当な重さでしょう。カバディの周囲には家族・友人がつきそい、休憩や水分補給などのサポートをしていました。


円盤状カバディの裏側にはムルガン神の絵。この神は赤ん坊~幼児~少年~青年と様々な年代で絵で描かれますが、槍を持ち孔雀を従えるのがお約束。また兄弟神のガネーシャ神と共に描かれることもあります。
※ クリックすると絵は拡大されます




ムルガン神とガネーシャ神との絵ですが、ガネーシャ神も乗り物の動物を従えているのに気づきましたか? 絵を拡大して確認してみてください。象がこんな小さな動物に乗るのがおもしろいですね。



ムルガン神の他にも人気の神々の絵が登場したりします。古代叙事詩『ラーマーヤナ』で主人公ラーマ王子を助けて大活躍する猿神ハヌマーンも大人気。
※ バトゥ・ケーブにも野生の猿がいますが、食べ物を奪っていくので要注意。





バトゥ・ケーブから数百m離れた所にカバディを整えて発進する基地があります。そこから次々にカバディがやって来る。これが深夜まで続くとか。
タイプーサム見所➂ 苦行 ※閲覧注意
タイプーサムは「奇祭」と紹介されることがあります。なぜなら参拝者の一部は我が身を苦しめる「苦行」を行いながら進むからです。苦行は頬や舌に長い串を刺す、重しをつけたフックを体に刺すなどです。インドではこれがあまりにも過激になったことからタイプーサムが禁止されました。
現在タイプーサムが行われるのはマレーシア、シンガポールのみとか。「苦行」を見に行くというのもなんですが、これも異文化理解のひとつでしょう。
昨年から「苦行」がソフト化される傾向
2023年コロナ明けのタイプーサムでは「苦行」は従来通りでしたが、昨年はソフト化されていました。※ 2023年の苦行の様子はこちらご覧ください。
2023ヒンドゥー教の奇祭タイプーサムに行ってみた②苦行・参拝編 に移動します


2023年まで一部のカバディから金属の支柱が沢山のびており、その尖った先端を体にくいこませるというとんでもない苦行がありました。
2024年にこれは見られなくなり、今年も「尖った支柱の苦行」はありませんでした。ちなみにこの支柱はカバディを支えるのに不可欠ではありません。

「頬に刺す串の苦行」が激減! 串は「口でくわえているだけ」が多い


ハードコア(筋金入り)の苦行者も健在
理由は分からねど苦行はソフト化の傾向にあります。ただ「禁じられている」わけではないらしく、一部の参拝者は昔からの苦行を続けていました。




真摯(しんし・真面目でひたむき)な宗教行事であるタイプーサムが、「奇祭」というキワモノ扱いされるのはよくないので、苦行ソフト化は良い方向かと思います。
ただ「尖った支柱の苦行」が無くなったことで、比較的小型のカバディを回転させながら踊るパフォーマンスが増加中。新たな名物になるのかな。

タイプーサムの風景


アンワル首相はイスラム教徒ですが、各方面に気をつかうのですね。


カバディの出発点は隠れた見所。参拝前の祝福や儀式が見られます。場所はカバディがやって来る方向に進めば見つかる。


ドラム隊の着ていた子供シヴァ神Tシャツはなかなかレア。主神の一柱であるシヴァ神は威厳のある姿で描かれるのが普通。子供バージョンは初めて見た。




午後に入ると一段と人が増えてきます。本日はここで撤収のトラタロウです。
帰りも無料・直行バスで楽々でした。
もう一幕ありました
2/13(木)未明、クアラルンプール中心部にあるチャイナタウンの一角に人が集まってきました。

チャイナタウンの西側にあるスリ・マハ・マリアマン寺院から、2/9に出発したムルガン神の御神体がバトゥ・ケーブから戻ってくるのです。





また来年会えるかな
2025年のタイプーサム参加者は 2/1~2/11 正午までで延べ180万人と発表されています。
マレーシア人口が約3400万人、インド系が7%なので約240万人。8割がヒンドゥー教徒としても192万人なので、ほとんどのマレーシア国内ヒンドゥー教徒が参加している計算ですね。
海外からのヒンドゥー教徒はどれくらい来ているのかな。
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