あれは2013年の夏、KLにMM2Hの申請書類を出すために来て、終了後ペナンに遊びに行きました。両都市のチャイナタウンで中元節とやらを行っていることに気づきます。
祭壇を作ってお供え、お祈り、劇団の興行、路上で紙銭を燃やすなどを見て中国人の民族宗教である道教の習慣なのね、ぐらいの認識しかありませんでした。今回調べてみたら日本のお盆のルーツになる行事だったのですね。徒歩圏内にあるローカルな華人街で中元節をやっていたので、4日間に渡って見に行ってみました。
中元節とは何?
もともとは中国の民族宗教である道教の習慣です。道教は古代の老子の思想を源に不老長寿、仙人思想、呪術、偉人の神格化などの民間信仰が融合した独特の宗教です。
中国らしく先祖崇拝が重要。旧暦7月に祖先の霊が戻ってくるので、これを迎え、お祀りし、送り返すという行事が中元節です。
やがて仏教の盂蘭盆会(うらぼんえ)と融合し、日本では仏教行事「お盆」として定着しました。この行事に関連するお返しとして、お世話になった方に贈り物をしたのが「お中元」の始まりです。
日本のお盆との違いもあります。ご先祖様の霊があの世から戻ってくるのは同じですが、地獄の門も開くため幽霊もやって来ます。旧暦7月は悪霊に取りつかれないように色々な生活上のタブーがあり、悪霊をなだめるため供物や演劇が用意されます。
ちなみに中国語で幽霊は「鬼」、このためこの行事は鬼節とも呼ばれ、英語だと「ハングリーゴースト・フェスティバル」だそうです。
※ 中元節に関連する解説として香港の例もあります
香港の伝統行事 盂蘭節を知る に移動します
中元節の初日・2日目
クアラルンプールでは主要3民族が各地に自分たちのコミュニティを作って生活しています。ここはチョーキット地区にある華人(中国人)のコミュニティ。小さいながらいくつもの道教寺院があります。ちなみにトラタロウのウォーキングコースのひとつです。
2023年8月24日(木)、ここを通りかかると横断幕がありまして、何だか分からないけど8/25の午前8時に何かがあるみたい。中元节が何だか不明でしたが、帰って調べると日本ではお盆にあたる中元節のこと。明朝ウォーキングがてら行ってみましょう。
8/25(金)ちょっと遅めのウォーキングがてら華人街に行きました。
道教寺院には何だか近隣のお年寄りが参集。それはよいが空き地に屋根付き仮設家屋が建てられ、そこには豪華絢爛な色彩の豪邸を模した祭壇?が20基あまり置かれていました。紙製ではあるが3~4m四方の大きさで、なかなかリアルに豪邸を表現している。
9:00くらいからお年寄りが動き始める。見ていると寺院の一角に米や物品が積み重ねられており、これをお年寄りに配布していた。横断幕に「施贈貧老」とあったのはこの事だったんですね。並べばもらえそうな雰囲気はあったが、これは遠慮しました。
仏教寺院でも何か行事を行っているのかな? ブリックフィールズにある仏教寺院Maha Vihara に行ってみました。そうしたら見事に何も無しの平常運転です。マレーシアのお盆は仏教とは関連しない? またはインド系仏教寺院は関係ない?
インド人街でカレー食べて帰ります。魚カレー煮美味でした。
中元節の3日目
8/26(土)やはりお祀りは夜が中心みたいなので、今日は日没直前に行きます。
行けば豪邸型祭壇はライトアップされ、遺影が置かれ、お供え物がありました。
紙製とはいえその大きさ、派手さ、豪華さに感心です。左右には金・銀の山を模した構造物があります。中の人形が動いたり、自動車道があったりとそれぞれ個性がありました。
自動車の模型が用意されていました。ご先祖様があの世に帰るときの移動手段かな。日本でもナスやキュウリで馬を作り、帰りの乗り物としてお供えする習慣がありますが、中国人は自動車とは近代的だな。
中元節は旧暦7月15日より4日間行われ、この期間にご先祖様の霊が戻ってくるとか。この辺は日本のお盆とほぼ同じですね。
竹の枝につけた短冊を持った一団が本堂に集まります。豪邸型祭壇の施主(この表現が適切かどうか分かりませんが、これで統一します)なのでしょう。道士(道教のお坊さん)によるお祈りの後、豪邸型祭壇前に移動しました。
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本堂前には舞台がしつらえられ、役者が準備をしています。やがて役者が本殿で公演開始の口上を述べ、儀式を行いました。
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麒麟戯劇団の公演が始まりましたが、見ているのは数人だけ。実はこの公演は生きている人が対象ではありません。現世に一時戻られた御先祖の霊を慰めるためのものです。
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外では供物、紙銭が並べられた机の周りに道士が集まり儀式がおこなわれます。やがて人形がセットされた円柱が回され、道士が筆を持ち中空に祈りの字句を書いていました。
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まだ儀式は続くようですが、もう遅いので今日はここまでにします。
中元節最終日
8/27(日)インド系仏教寺院では中元節はありませんでしたが、中国系仏教寺院ならやっているかも。KLCCにある法界観音霊寺に行ってみました。
結論:何もありませんでした。
日本では中国仏教を起源とする盂蘭盆会(うらぼんえ、ご先祖を祀り、施餓鬼もする)が祖霊信仰と結びついて仏教行事お盆になりました。でも中国のお盆は道教の行事で仏教は関係ないみたいです。Ps国や地方によって異なるのかも。
今日が中元節の最終日、チョーキット華人街に日没ごろ出かけます。今日はペナンで見たように各家の前で紙銭や供物を燃やし、ご先祖様の霊を送る風景がみれるはず。
華人街のあちらこちらに送り火の煙があがる幻想的風景を期待して来たが、どこにも送り火の準備無し。でも消防車が停まり消防署員が来ていました。これはあれですね、大都会では規制が厳しく、道教寺院で消防署監督のうえで燃やすのでしょう。
道教寺院では外に祭壇が設けられ、道士たちの音曲に合わせて正道士によるお祈りが始まります。背後には豪邸型祭壇の施主代表がひかえていました。
道士のお祈りの後、施主一同は本殿導かれてお祈り、と思ったら皆で小走りに駆け出しました。若者はともかく年配者には大変! 宙に紙銭が舞い、道士音曲隊もここぞとばかりに熱演です。
船は冥界に帰るご先祖様のための道しるべです。長崎の精霊流しともルーツが重なるのかな。
豪邸型祭壇ではご先祖様が帰られる準備です。乗り物である輿(こし)や自動車が運びこまれ、冥界でのお小遣いになる紙銭が積み上げられます。昔はこれを燃やしていたのでしょうが、大都市の人口密集地では無理だね。
※ 輿(こし)は昔貴婦人が乗った駕籠(かご)のような乗り物です。今でも中国式の結婚式で花嫁が乗って登場します。「玉の輿」(玉の腰ではありません・笑)のいわれです。
この記録の解説はトラタロウのわずかな道教知識と推定によるものですので、正確なものではありません。詳しい方がいたらぜひ教えていただきたいです。
観光地とは全然関係ないローカルな華人街の素朴な年中行事でした。また行事があれば見に来たいが、次は中秋節かな?
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