マレーシアはマレー人、華人、インド人という3大民族が暮らすため、様々な料理が食べられるグルメ天国。高級なレストランもありますが、根がバックパッカーなトラタロウはB級グルメ専門です。クアラルンプールの繁華街ブキビンタンで美味しく、リーズナブルな中華料理を見つけて何回も通ってしまいました。川湘料理という耳慣れぬ中華です。
川湘料理って何だろう?
ブキビンタンはクアラルンプール有数の繁華街。高級な店やフードコートも多いのですが、少し探せばオフィスの勤め人が昼食を食べにくる地元民御用達の店もあります。そのひとつが WISMA COSWAY というビル。

ブキビンタンの高級モール・パビリオンの裏手にある WISMA COSWAY は GOKL のバス停があるので知ってはいました。ある時どんな店があるのかな、と入ってみて驚愕! 1階から3階に20店舗以上の中華系を主とした小さい飲食店があり、お昼時には周辺から華人系オフィスワーカーが大挙して押しかけるB級グルメ・スポットだったのです。そこの飲食店のひとつ川湘小館という店にはまってしまいました。

川湘小館は文字通り「川湘料理」の店ですがなにそれ?
日本人にも知られている中華料理と言えばアヒルの丸焼きで有名な北京料理、カニが名物の上海料理、麻婆豆腐・担々麵の四川料理、飲茶・海鮮の広東料理。これに山東、江蘇、浙江、安徽を加えて中国八大料理と言うとか。
さらに南方系に絞ると広東、福建、四川、湖南に分類されます。この中の四川(川菜)と湖南(湘菜)を合わせて川湘料理と言うらしい。


グーグルマップで検索すると10軒近くの川湘料理店がヒット。マレーシアの華人は中国のいろいろな場所から来ているので、四川や湖南からも来ていたのかな。日本人には耳慣れぬ川湘料理も在馬華人には普通の存在みたい。
ちなみに四川省と湖南省はあいだに重慶市があり、現在はつながっていません。これは現在の区分なので歴史的には仲間の感じなのかな。


お昼前にならないとオカズがそろいません
川湘小館はエスカレーターで2階(マレーシア流だと1F)に上がって左手。店の看板も説明もすべて漢字です。「表意文字」のありがたさ、なんとなく解る部分もありますね。
中国語も複数ありますが、マレーシアでは中国本土の共通語の北京語(Mandarin)の他に広東語、福建語、客家語などが使われています。


店内に入ると机におかずの入ったプラスチック深皿がずらりと並びます。これが看板にあった「小椀菜」ということなのね。ここから好きなおかずを選ぶスタイルで隣室が食堂になっていました。
どんなおかずがあるのかな

店舗の一角が調理場だが設備は簡単なもので、家庭料理感満載です。
並べられた料理には名前と価格の札がついており、現物と照らし合わせるとどんな料理かなんとなく分かります。



キュウリのあえ物、ピータンのあえ物
知っていると理解しやすい中華料理名称の法則
以下のようなポイントがあります
① 豆角(サヤインゲン)、土豆(ジャガイモ)、青椒(ピーマン)など材料名が入る。
※ 鸡(鶏)、蛋(卵)、香菇(シイタケ)など日本と漢字が違う物は知らないと難しいですね、豚は「猪」でイノシシは「野猪」だったりします
② 「炒」(炒める)や「拌」(和える)「紅焼」(醤油煮込み)「烤」(炙り焼き)などの調理法や肉絲(肉の細切れ・青椒肉絲チンジャオロースです)、肉沫(挽肉)など材料の加工状態が入る。
※「回鍋肉」は(加熱した肉を鍋に戻す)という調理法が料理名になっています
➂ 「酸」「辣」(辛い)「麻」(しびれるような辛さ)など味付けが入っている。
※ ラー油(辣油)は辛い油ですね
④ 麻婆豆腐(あばたのあるお婆さんが考案)、東坡肉(蘇東坡が考案)、担々麺(担いで売られていた)など考案者、発祥のエピソードで名付けられた。
※ 全部を知るのは大変ですが、一部だけでも知っていればどんな料理か見当がつくこともあります。

鶏肉煮込み、ニガウリ鶏肉炒め

挽肉とナス煮物、最後は分かりません

トマトと卵炒め

酸味・辛味を効かせて炒めました

おかずは十数品出ています。肉系は5リンギッ(約¥165)、野菜系は2.8リンギッ(¥92)から。肉系2品、野菜系2品、ご飯とスープで20から22リンギッ程度(¥700前後)で2人が満腹です。
ブキビンタンという一等地でこの値段はすごく安いですね。WISMA COSWAY内の飲食店は華人顧客の奪い合いをしている状態なので、どの店も安くて美味いのです。
実食してみました
おかずを選んでご飯をセット(主食は基本白米のみ)してもらい、隣の食堂に移動。ここに無料のスープがあり、これで定食みたいになります。電子レンジで温めも可能。

よそってくれました

スープは薄味ですが、中華料理ではスープは口直し的な扱いで、あまり強い味付けはしません。中国語でスープは「湯」(タン)でタンメンはスープ麺ということです。お湯は「熱水」で英語と一緒です。


最初に選んだのが四川料理のひとつ肉沫茄子。四川料理は辛いのが特徴ですが、思ったよりマイルド。油とナスも合性が良くご飯に合います。油の使用量が多くカロリー的にはひきましたが。
西紅柿牛肉の西紅柿はトマト。トマト味の牛肉にちょっと違和感がありましたが、食べてみるとイタリアン的でありですね。

豆角肉片はインゲンと豚肉炒めで普通に美味しい。回鍋肉は日本で食べるそれとは違う感じでしたが豚肉が妙に美味い。食感が全然違ったのですが秘密は豚肉にありました。

イスラム教国のマレーシアですが、華人も多いので豚肉も買えます。スーパーなどではイスラム教徒が食べられない「ノン・ハラール」として隔離されて売られます。
トラタロウはもっぱらプドゥなどの華人市場で買いますが、日本と違うのはブロック肉からの量り売り。そしてばら肉には皮がついていることです。
豚の皮は皮革加工すれば靴やらカバンになるあれです。日本では剥いで売っていますし、マレーシア華人もいらない人はむいてもらっていたので「食べられる部分」という認識がありませんでした。
川湘小館の回鍋肉の豚肉は皮つきで、皮の弾力のある食感が新鮮。後日自宅で豚皮も調理して見ましたが十分食える、いやむしろ美味いと言ってよいです。これからは豚皮は捨てません。
※ 豚肉ブロックを買ってショウガ焼きなどに使う時は薄切りにしたいですね。生肉を半冷凍状態にすると家庭用の包丁でも薄く切れます。
2回目のチョイスはこちら


西紅柿鸡蛋はトマトと卵の炒め煮で中国でよく食べられ、麺の具にもなっていました。
青椒鸡蛋はピーマンと卵炒め。
土豆牛肉はジャガイモと牛肉煮込み。ちょっと濃いめの味付けがクセのある牛肉とマッチ。中国では豚肉が主流なので、ただ「肉」とあれば豚肉。他は牛肉、羊肉など家畜名が入ります。
3回目のチョイスはこちら


麻婆豆腐は四川を代表する料理で日本人にもなじみがあります。成都に元祖の店『陳家麻婆豆腐店』があり三十数年前に行きました。辛い料理には自信がありましたが、唯一完食できなかった料理。トウガラシだけではなく山椒が小山のように盛られていて降参でした。
川湘小館のそれは山椒はほとんど無く、トウガラシは多いが(直接食べなければ)なんとか許容範囲です。

皮蛋豆腐はアヒルの発酵食品ピータンと豆腐の和え物。ここのはニンニクを効かせてあって好みです。ピータンは華人市場で時々買っていますが、Century egg という英語名があるのを知りました。
なんで「百年卵」なの?長期保存がきくから?
牛肉たまねぎ炒めは醤油ベースでなじみの味。酸辣土豆は細切りのジャガイモを酸味辛味を加えて炒めた物。酸辣(スワンラー)は湖南料理を代表する味付けみたい。

四川料理も湖南料理も辛味が強く個性的な味付けですが、ここのはマイルドで食べやすい。マレーシアの華人も出身地が多様なので万人受けするようにしているのかな。さらに家庭的な味わいで飽きがきません。
WISMA COSWAY は安くて美味しい店が多そうなので、他の店も探求してみたいですね。
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