ラマダン(Ramadan)はヒジュラ暦(イスラム暦)の9月を意味し、ムスリムの重要な義務である断食(アラビア語でサウム・Sawm、マレー語でプアサ・Puasa)を行う月になります。断食を通じて信仰を深め、信徒の団結を強めるのです。
トラタロウは旅行先でラマダンに遭遇したことはありますが、住んでいる所でラマダンになるのは初めての経験。マレーシアではラマダンが終わるとお正月に相当するお休みハリラヤ・プアサ( Hari Raya Puasa )に突入しますので合わせてレポートします。
※ Hari(日)、 Raya (大きな)、Puasa (断食)という意味です。
Aidilfitri(アイディルフィトリ)という表現も目にしますが、こちらはアラビア語の表現で「断食明けの祝日」の意。
兆候はラマダン・セールから
断食は宗教行事とはいえコマーシャリズムからは逃れられません。と言うかラマダン・ハリラヤ期間はすごいビジネスチャンスなのです。
断食だから食料消費量が減るかと思いきや、日没~明け方前までに飲食という制限のためか、逆に食料消費は増大します。ここで売らなきゃ商売人とは言えませんね。
これらの広告、ポスターが何よりも早くラマダンの訪れを予告します。
断食が始まる前からスーパー、コンビニ、飲食店にラマダン・セールの広告が貼られ、商品が展示されます。
食品だけではありません。普段から屋台が多いクアラルンプール市内ですが、ラマダンに入ると屋台が雨後のタケノコ状態。
いままで何も無かった通りがテント屋台で埋め尽くされる場所もあります。食品のほかに服や雑貨も多く、ハリラヤ・セールにつながっていきます。
イスラム暦(ヒジュラ暦)とは何でしょう?
トラタロウが初めて海外でラマダンを体験したのが1998年12月ケニアでした。前回マレーシアでラマダンになったのは2013年8月でした。そして今年のラマダンは西暦の3月から。
なんでこんな現象になるかというと、ラマダンはイスラム暦に基づくからです。西暦622年7/15、メッカ(マッカ)で迫害を受けた予言者ムハマンドは北方の都市メディナ(マディーナ)に移住されます、あっここテストに出ます(笑)。やがてメディナでイスラムの教義などが整備されるのですが、この移動をヒジュラ(日本では聖遷と訳される)と呼び、これがイスラム暦の始まり。西暦2023年=イスラム暦1442年
それはよいのですが、イスラム暦は月の運行を基準とする1年=354日の暦(太陰暦)。毎年11日づつ日付と季節がずれていくのです。マレーシアのように四季の変化に乏しい国は別ですが、四季のある国だとある時はラマダンが冬、ある時は夏と変化していきます。
江戸時代の日本の暦も月の運行が基準でしたが、閏月などを設けて月日と季節を一致させる太陰太陽暦でした。
モールのハリラヤ・デコレーション
あちらこちらのモールでは、ハリラヤ前のセールを盛り上げるためのデコレーションを行います。何か所も見に行くとデコが3つの系統に分かれるということを知りました。
① 植物・幾何学模様系統
イスラムの教えでは唯一神アッラーに姿かたちは無く、神の絵・像を拝む偶像崇拝は固く禁じられるところです。モスクの装飾も幾何学模様や植物模様が多いのはこのため。
宗教行事である断食に関係するハリラヤの装飾もこれに準じるのが無難な選択です。費用的にも安いのかもしれません。
やはり行事・季節ごとのデコレーションでは定評のあるパビリオン、見た中では植物・幾何学模様系統では1等賞かな。
② カンポン(村)系統
バリッ・カンポン ( Balik Kampong )という言葉があります。直訳すれば「村に帰ろう」、帰省を意味します。800万都市クアラルンプールの人口は30年で3倍以上に増大、当然ながら地方出身者も増大。ハリラヤは帰省のシーズンであり、故郷を思い起こさせるデコレーションも多いのです。※2023年・帰省期間中は高速料金も無料になりました。
➂ アラビック系統
イスラム教はアラビア半島で7世紀に始まり世界に広まりましたので、イスラム教のイメージは砂漠やアラビア的な建物。熱帯雨林気候のマレーシアでも事情は同じで、アラビックなハリラヤ・デコも少数ながらありました。
すごかったのはブキビンタンに近いベルジャヤ・タイムズスクエア。実物大のラクダ模型2頭を中心に、アラブのスーク(市場)の様子を再現。
ラクダは体高2mを越えるけっこうデカイ生き物なので、実物大の模型は迫力満点。
訪れたモールの中ではインパクトは一番!
ラマダン・バザール
この時期のムスリムは大変です。朝は未明に起きて5時台に食事、あとは夕刻7:30ぐらいまで飲食禁止ですから。その分断食後の食事ブカ・プアサ( Buka Puasa ) が重要になりますね。
KL市内のあちらこちらに夕食用の美味しい物を売る屋台村、ラマダン・バザールが開かれるのです。
ラマダン・バザールのゲートには「 Ikhlas 」(イフラース)の文字。アラビア語で「純正」「誠実」の意味ですが、この場合は「アッラーのために行う行為」を意味します。
※ ラマダン・バザールのバザールの詳細は
2023ラマダン・バザールに行ってみた①カンポン・バル編
2023ラマダン・バザールに行ってみた②トゥアンク・A・R編 をご覧ください
日々の断食風景
今年の断食は実質4/23の夜明けから始まりました。1日に何時間飲食禁止なのでしょうか。断食表の左端 Imsak が断食開始時間で6:00ちょっと前。終了は日没を意味するMaghribで夜7:25前後。これらの時間はかなり厳密に天体観測され決まります。世界中で異なりますし、マレーシア国内でも数分違います。
なんだかんだで一日14時間近くの飲食禁止はつらいですね。もちろん子供には適応されませんし、病人・老人、旅行・戦争・災害時には免除・延期が認められていますが。
※ 日没はMaghribですがアラビア語ですね。アフリカ北西部のモロッコやチュニジアは日が沈む方向に位置するのでマグレブ諸国と呼ばれるのはこのため。
ラマダン時期、いつもは朝からやっているイスラム系の飲食店は営業短縮。昼間も非ムスリム相手かお持ち帰りのみ。
店内やフードコートにはムスリムは飲食禁止の注意書きが張り出されたりします。
明らかにムスリムと判る成人が飲食していると、宗教警察( Moral Police ) が来て逮捕されちゃうそうです。
トラタロウの過去ラマダン体験
トラタロウが旅行中初めてラマダン期間に遭遇したのは1998年12月のケニアでした。
ケニアも沿岸地帯はムスリムが多いのです。
朝から夕方に飲食店が閉まっているのは閉口しますが、何か買って食べていればすむこと。
市場を見物に行った時、当時スモーカーだったトラタロウが一服していると、地元の爺様にエライ剣幕で叱られてしまいました。
スワヒリ語か地元方言なので正確には分かりませんが「ラマダン中にタバコを吸うとはけしからん」ということでしょう。そう、飲食だけでなくタバコも禁止でした。もちろん非ムスリムには適応されないはずなのですが…
夕方近所のマレー系ナシチャンプル店に行くとお持ち帰り客で大にぎわい。食べていきたい人達は注文をして、料理はテーブルにありますがお預け状態。時間がくると近くのモスクから祈りの声が流れ、それを合図に皆さんブカ・プアサ(断食後の食事)をいただいてました。
皆さん一日お疲れ様でした。明日も頑張ってください。
※ ただいまハリラヤ・プアサ2日目、終了したあたりで続編公開できるかな。
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