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スリランカに行ったのでマレーシアと比べてみた

仏教とヒンドゥー教が混在する不思議な国でした

 「インド洋の真珠」と呼ばれるスリランカ。マレーシアとほぼ同緯度に位置する熱帯気候の国で、イギリスの植民地だった経緯も同じ。24年ぶりに2回目のスリランカ旅行に行ったので、マレーシアと比べてみました。

両国の基本情報です

地図
ほぼ同緯度に位置する両国、4時間ほどのフライトで行き来できます

 マレーシアはマレー半島部だけでなくボルネオ島北部も領有していますので面積は日本の8割ほど。スリランカは北海道の8割(九州の1.7倍)ほどの大きさです。
 人口はマレーシアの3306万人に対し、スリランカは2240万人で三分の二くらい。
 経済力は2023年の1人あたりの名目GDPでマレーシアは12.570ドル、スリランカは3342ドルとだいぶ差があります。2022年にスリランカは債務不履行(デフォルト)となり暴動発生、大統領逃亡、物価高騰と大変でした。現在はだいぶ落ち着いているようです。
 ちなみにトラタロウが初めてスリランカに行った2000年(平成12年)当時はタミル人武装勢力と内戦状態であり、最北部ジャフナに旅行者は入れませんでした(今回は行けました)。

比較① マレー人とシンハラ人

 両国とも多民族国家ですが、マレーシアの多数派は70%を占めるマレー人(先住民を含む)で多くはイスラム教徒。
 23%を占める華人は中国からの移民の子孫。7%ほどいるタミル人は英植民地時代に南インドから移住させられた南インド人がルーツ。
 三民族とも同民族内で婚姻関係を結ぶのが普通なので、見た目で区別できます。

ムスリム
多数派のマレー人はムスリムが多い
インド人
この中でインド人は誰でしょう?

 スリランカも三大民族がいます。シンハラ人が74%ほどで多数派。南インドから移住したタミル人が18%。インド洋貿易の影響かイスラム教徒のムーア人も8%ほど。
 マレーシアと同様、言語・宗教などの文化が異なるのでお互い距離はおいているようです。
 ただ見た目は近い人達が多いので、日本人にはマレーシアほど区別がはっきりしませね。

比較② 宗教

モスク
礼拝に集まるムスリム
ポーヤ
ポーヤデー(満月)はお参り日のスリランカ

 マレーシアもスリランカも同じ宗教がありますが比率は違います。
マレーシア…イスラム教(64%)、仏教(19%)、キリスト教(9%)、ヒンドゥー教(6%)
スリランカ…仏教(70%)、ヒンドゥー教(13%)、イスラム教(10%)、キリスト教(6%)

 イスラム教国であるマレーシアですが、意外と仏教徒が多いのは華人(中国系)が多いため。マレーシアもスリランカも同じく大乗仏教(仏様にすがり皆を救う)です。個人の修行を重視し一生に一度は出家をする上座仏教(タイ、ラオス、ミャンマー)と違い僧侶はあまり見ません。

 両国ともにヒンドゥー教が多いのは、英植民地時代にインド人が農業労働者として移住させられた影響でしょう。どちらも南インドに多いタミル系で、シヴァ神の息子ムルガン(スカンダ)神信仰が盛んなのも同じですね。
 ムルガン神は軍神で母パールバティ神より授かった槍を持ち、孔雀を従えているのが特徴。
兄神は象の頭のガネーシャ神であり、仏教の守護神としては韋駄天と呼ばれます。

ムルガン神
ムルガン神像(ジャフナ)

 キリスト教徒もいるのはやはりイギリス支配の影響。タミル人に多いのです。クアラルンプールでもインド人居住区ブリックフィールズには教会が多い。

ラクシュミー神
バス車内の仏像(左)とヒンドゥー教女神の絵

 あまり知られていませんが仏教・ヒンドゥー教は兄弟関係にあります。ヒンドゥー教は仏陀をヴィシュヌ神の化身として拝みますし、仏教はヒンドゥー教諸神を仏教守護神として拝むのです。
 スリランカ仏教はこの傾向が強く、仏像と共にヒンドゥー教の神が祀られていました。
 ※ バス車内のヒンドゥー教女神はラクシュミー神。仏教では吉祥天と呼ばれる。

※ 仏教の守護神となったヒンドゥー教諸神は明王・天部と呼ばれます。
  下記のサイトに詳しいです。
  仏の種類とは?明王・天部・仏弟子を紹介

比較 言語

 マレー語とスリランカの主要言語であるシンハラ語は全然違うので比較にもなりません。
 ただ両国とも共通するのは英語が共通語になっていること。イギリスの支配下にあったことと多民族多言語であったため、国内異民族間での会話に英語が使われました。
 マレーシアでもそうですが、スリランカでも英語がかなり通用するので旅行も楽です。

シンハラ語
すごく丸い文字のシンハラ語

※ 日本支配下の台湾では日本語が学校教育でも使われました。今は中国語の国ですが、山岳地帯の各少数民族間では共通語として日本語が残っているとか。現在の台湾人の会話にも日本語が混じっていて(トウサン、カアサン、オバサン、ダイジョウブ等)知らないと驚きますね。

比較④ 猫派 と 犬派 ?

 マレーシアは犬が少ない国です。多数派のマレー人の多くがイスラム教徒。そしてイスラム教では「犬は不浄な存在」としているためペットにしないため。犬を飼うのは華人とインド人だけです。
 そして猫は大好き。野良猫にも誰かがエサをあげて可愛がっています。スーパーにはドックフードは無くてもキャットフードは沢山あります。猫博覧会もありました。

猫
ここは猫の天国マレーシア
犬
フリーダムなスリランカの犬たち

 スリランカは犬の天国。大都市・田舎を問わず犬だらけ。駅やバスターミナル構内でも平気で寝ていますが誰も気にしません。仏教は「全生物が平等・仲間」という考えがあるからでしょうか。仏教国タイやベトナムも犬だらけでした。でもラオスやミャンマーはそんなにいなかったかな?違いは何でしょう?
 ちなみに猫もいますが、路上では犬に追い払われるのかあまり見ません。

比較⑤ 食生活

 両国とも主食は米。ただマレーシアはイギリスの植民地政策のため、アブラヤシなどの商品作物を大量生産するプランテーション(大規模農場)に流用されたため水田は少ないです。少なくともクアラルンプール都市圏で水田は見たことがないですね。
 マレーシアの米自給率を調べたら70%ほどとか。信じられない!スーパーで売っている米もタイやインド産が多く、輸入が多いとしか思えないが。

アブラヤシ畑
KL近郊のアブラヤシ畑

 スリランカは平野部のあちらこちらに水田が広がっていました。平野に白いパゴダ(仏塔)がそびえ、周囲は稲で緑に染まった絵のような風景が見られます。
 ただ小麦はほぼ輸入で貿易収支を圧迫しているとか。マレーシアは食料輸入は多いが、工業製品輸出で儲けているのでOKかな。

田園風景
スリランカの田園風景

 両国ともインド人が多いので、インド由来のロティ類(小麦製パン類の総称)も食べられています。スナック類も共通している物が沢山ありました。

ナシレマ
マレーシアの国民食ナシレマ
カリー
スリランカのカレー&ライス

 両国とも白米にソース(カレー)や野菜を添えた物が基本食。これに肉・魚を加えると贅沢バージョンになります。マレーシアのそれはナシレマと呼ばれ世界遺産登録申請中。
※ ナシレマについてはこちらもご覧ください。
  世界のB級グルメ/18 ナシレマ(ナシルマ) in マレーシア

 スリランカを3週間旅し現地食のみ食べ続けましたが、最大の感想は「思ったより高い!」です。もちろん日本と比べると安いのですが、物価が日本の半分くらいのマレーシアと比べると高く感じます。

チキン定食1
マレーシアのチキン定食
チキン定食2
スリランカのチキン定食

 まったく違う食品だと比較しにくいので、両国のチキン定食で比べてみます。マレーシアの方がチキンが大きいのに価格は両方とも邦貨換算¥400くらい。いろいろな食物で「あれっ?これだけ出せばマレーシアではもっと良い(多い)よね」という状況多々ありました。特に肉・魚などの動物性たんぱく質食品でスリランカ物は割高感があります。
 スーパーで価格を調べて驚愕! チキンはマレーシアで100g¥50くらいで買えるのにスリランカは¥100くらいしてました。魚は種類によって価格差が大きいので調べにくいのですが、マレーシアと同じか高いのです。ちなみにガソリンは1リッター¥180でした。
※ マレーシアは産油国であり価格を低く設定しているので¥70くらいかな。
 

 おそらくこれが2022年の債務不履行(デフォルト)の影響なのでしょう。諸物価、特にガソリン、食料品がものすごく高騰したそうです。

比較⑥ 紅茶

 世界の三大紅茶産地は上からインドケニアスリランカ。共通するのが紅茶栽培に適した高地があり、イギリスの植民地下で茶園開発が進められたこと。
 マレーシアも上記の条件にあてはまります。あまり有名ではありませんが半島中央部のキャメロンハイランドに茶園がありBoh Tea というブランドがあります。
 国民的飲料がミルク紅茶のテタレ(Teh Tarik)。特徴は仕上げに紅茶を高い位置から注ぐこと。これは紅茶に空気を含ませて舌ざわりを良くする効果があります。この動作をTarik(引く、ひっぱるという意味)と表現。

テタレ
ミルク紅茶をTarikしています

 スリランカは有名な紅茶の産地。インドにも近いので、路上にチャイ(インド流ミルク紅茶)の屋台があるはず。
 ところが紅茶屋台は全然ありませんでした。タミル人が多く、見た目ほとんどインドの街ジャフナにもありません。
 ローカル食堂で紅茶は飲めますが、ただのブラックティーでなんだかがっかり。

チャイ屋台
インドのチャイ屋台は情緒あり

比較⑦ 麺類が欲しい

 マレーシアは麺料理天国。華人(中国系)が多いので様々な麺料理があります。
 マレー系にもラクサという独特の麺があり、地域ごとに特徴を持ちます。
 インド系もスープ麺こそありませんがフライドヌードル(炒め麺)がありかなり美味しい。
 KLなら豚骨ラーメンの店も沢山ありますね。

ラクサ
マレー系の麵料理ラクサ

 これに対しスリランカは麺料理不毛地帯。一応麺はあるのですよ。イディアッパム(ストリング・ホッパー)という米を原料とする押出し麺。米粉生地を穴が沢山ある押出し器に入れ、生地を押し出してまとめ、蒸して作ります。
 これにカレーをかけていただきます。ところがこれは麺が固まっていてほぐれません。分類上は麺類なのですが麺を食べる感覚はゼロ。
※韓国の冷麺も押出し麺ですが、こちらは茹でて作るのでほぐれますね。

イディアッパム
一見麺だがほぐれません

 山岳部の村エラは田舎ですが、欧米観光客が集まり洋風レストラン・バー密集する観光街。
 ここでフライドヌードルの看板を見つけ即注文。少なくともインド的な炒め麺ぐらいは出てくると思っていました。
 出てきたのは細い米麺ですが、長さは5センチもない細切れ状態。分類上は麺料理ですけど、これは違うよ! すすれない麺は麺料理ではないと確信しました。

ふら
スプーンで食べる麵料理でした

 スリランカ滞在中に一番麺料理らしい物は、スーパーで買ったカップ麺です。

比較⑧ 首都の市内交通

 クアラルンプールの市内交通網は東南アジアで一番でしょう。市内鉄道・モノレール路線が縦横無尽に展開し、少し慣れればバスを利用することも難しくありません。
 ほとんどの交通機関は支払いも同じ交通カードで可能で料金も安い。アジア全体で見てもその利便性は東京、北京に続くほどだと思います。
 難点はタクシーがぼってくる、と評判が悪いことかな。

クアラルンプール
クアラルンプールの市内鉄道
スリーウィーラー
スリーウィーラーとバス

 スリランカで一番の大都市コロンボ(首都ではありませんけど)は普通鉄道とバスのみでクアラルンプールとは比較にもなりません。
 ただ運賃はマレーシアよりさらに安く、3~4キロぐらいなら鉄道で¥10、バスでも¥25ぐらい。これだけはスリランカ政府頑張っているのかな。
 三輪タクシー(スリーウィーラー)がぼってくるのはクアラルンプールと同じです。

比較⑨ 長距離バス

3列
かなり余裕がある3列シート

 両国とも国内長距離移動手段としては飛行機、鉄道がありますが、便数や運賃を考えると長距離バスがリーズナブルです。
 最近乗っていませんがマレーシアの夜行バスは、車体は同じ大きさでも3列シートでゆったり豪華でした。
 寝たまま移動できる中国やベトナムの寝台バスには負けますが、なかなかの快適さ。

路線バス
長距離でも路線バス車体で運行

 スリランカにもコロンボ・ジャフナ間を結ぶ高級夜行バス(普通の観光バスレベルを使用)がありますが、多くの長距離バスは路線バスと同じ車体です。しかもインド製のかなり年期の入ったやつ。
 これでコロンボ・ジャフナなら400キロを1日かけて走る感じですね。料金は安く¥800くらい。ただエアコンなし、窓もドアも全開で走るので砂ぼこりだらけになります。

比較⑩ 交通マナー

 マレーシアは良い所なんですが最低なのはドライバー・ライダーの歩行者に対するマナー。横断歩道で立っていても止まってくれるなんてありません(100台に2~3台くらいはありますが、そんな奇跡を当てにできません)。バイクだと信号無視、歩道乗り入れもありの傍若無人ぶり。
 これに対してスリランカは横断歩道でけっこう止まってくれる。そりゃ日本ほどではないがマレーシアの状態に慣れていると感動ものです。
※ 日本の歩行者保護も欧州に比べると不十分だといいます。マレーシアに来た欧州人は驚愕しているのだろうな。

マレーシア
横断歩道でも車は止まらないマレーシア
スリランカ
けっこう止まってくれるスリランカ

 なぜマレーシアは車優先社会なのか? 植民地時代に自動車は支配者たる白人の物で、当然被支配者たる歩行者をケチラシテ進みます。その悪しき習慣が現在まで続いたのか? でもスリランカだって同じ大英帝国支配下だったよね。
 ちなみに日本を除くアジア圏で一番歩行者優先なのはシンガポール。まあ、あそこは性善説など信ぜず、厳しい法治主義(罰金高い)で秩序を維持する国ですから。

比較⑪ 喫煙事情

 世界的に喫煙に対する制限が多くなっているが、マレーシアもタバコ持ち込みの免税措置が無くなったとか。ただ国内ではコンビニでタバコは¥400~¥500ぐらいで売られているし、喫煙者もソコソコに見かけるのでそんなに厳しい感じはしません。

束になったビーデー

 スリランカは国外からのタバコ持ち込みは禁止。さらにタバコ価格は¥700以上とかなり高い。たばこを1本からバラ売りしているが¥80ぐらいとなかなか厳しい値段ですね。
 庶民が吸っているのが「ビーデー」と呼ばれるミニ葉巻みたいな外見のタバコ。なかなかクセのある味らしいが、1本¥5くらいなので雑貨屋などでよく売れている様子です。
 

※ 最近気づいたがマレーシアでもタバコ1本売りしていました。外国人労働者の多い地区のキオスクで、店頭にライターがぶら下がっていたらあります。1本¥40くらいらしい。

比較⑫ フレンドリー

マレー人
フレンドリーなマレー人の子供
シンハラ人
さらにさらにフレンドリーなスリランカ人

 トラタロウがマレーシアに住むことを決めた要因のひとつが外国人(特に日本人)に対する親密度。そりゃ自分たちを嫌っている国に好き好んで住みませんよね。マレーシア人は目が合うとニッコリ笑ってくれたりするのでいい感じ。さらになかなかの親日国なので住みやすい。
 ところがスリランカ人は アイキャッチ + ニッコリ がマレーシアをも上回る勢い。優しい人が多くて3週間の旅行中一度も不快な目に会いませんでした。スリランカ旅行オススメです。

おまけのスリランカ写真集

市場
朝の市場、お香を焚き清めます
硬券
鉄道切符が硬券で懐かしい
中古車活躍
日本の中古車活躍、時々「バックします」とかの日本語が聞こえる。
象軍団
象軍団が出撃?
ヌワレエリア
ヌワラエリアの紅茶畑
仏様
いたる所に仏様
食べた
食べた分だけ払います
鉄道石橋
鉄道石橋を渡る列車
記念撮影
象もポーズをとってくれる記念撮影
夕陽
コロンボの夕陽の名所

 ※ スリランカ旅行記 と B級グルメ記事 を『トラベルダイアリートラタロウ』に順次公開していきます。よろしかったらご覧ください。

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この記事を書いた人

『KLダイアリートラタロウ』お読みいただきありがとうございます。
姉妹ブログとして旅行と海外食生活をテーマにした『トラベルダイアリートラタロウ』https://tabivoyagetrip.blog/ もありますので、よろしければご覧ください。

コメント

コメント一覧 (2件)

  • ポイントを押さえていてものすごく分かりやすい比較でした。ありがとうございました!

    • KL様
      読んでいただきありがとうございました。スリランカは良い所ですので、旅行にはオススメです。
      ただ住むにはやはりマレーシアが良いですね。特にローカル食の美味しさ、種類の豊富さ、日本食の入手では断トツです。
      『トラベルダイアリートラタロウ』で海外旅行記NO64 スリランカ ①コロンボ・ジャフナ編を公開しました。
      よろしければご覧ください。
      トラタロウ

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